この夏が終わっても

司会者の人に紹介をされて、たくさんのお客さんの拍手に迎えられて、私達はステージに足を進めた。

眩しいくらいに当てられたライトに照らされて、チカチカする。
昨日のリハーサルでは昼間だったから、さほど感じなかったけど…。
今、自分がとても特別な場所に立っているような気持ちになった。


準備が整って、ヴォーカルの私が曲紹介をする事になっているから、ゆっくりと中央のマイクの前に立つ。

すぐに曲紹介を始めるつもりだった。

……けど。
私の目と心は、自然と将ちゃんを捜していた。

たくさんの人。
ステージが明るいから、観客席は余計に暗く感じて…。私の位置からはよく顔が見えない。


次第にザワザワし始めた観客の空気に、諦めて曲紹介をしようと口を開こうとした時…。


「里奈ちゃ〜〜んッ!!」

「頑張れ〜〜ッ!!
みんな、ここで観てるよ〜〜ッ!!!」

観客席から私の耳に届く、声。
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