この夏が終わっても

……
………。

歌い終わると…。
ボーッとした私の耳に、「ワアァァーーッ!!!!」っとすごい歓声と拍手が聞こえてきた。

……。

終わった。
無事に、歌いきった。

……けど。
まだ、私の中では終わっていなかった。


「っ……将ちゃんッ!!好きーーーッ!!!!」

司会者が後紹介を始めようとした中。
私はスタンドマイクを握り締めて思いっきり叫んだ。

会場中に響く、私の告白。

声が枯れてもいい。
今言わなかったら、一生後悔する。

この込み上がる気持ちを、溢れ出す想いを伝えなかったら…。
私はこの夏から、一歩も踏み出せない。


「っ…ずっと、ずっ〜と……。
私は、…将ちゃんが…大好き…だよっ。」

もう泣かないって決めてた。
将ちゃんと会えなくなったあの夜以来。枯れてしまったのかと思うくらいに悲しくても、寂しくても出なかった涙。

なのに…。
こんな大事な時にまた溢れてきて、言葉が詰まる。
視野が、滲んでしまう。
< 129 / 139 >

この作品をシェア

pagetop