この夏が終わっても

「高杉里奈です。
はじめまして、お世話になります!」

俺が隣を見ると、里奈が正面に歩んでくる涼に向かって自己紹介をしていた。

頭を軽く下げる里奈。
俺は、その里奈を見つめている涼を見て…。胸がザワついた。
彼女を見つめる涼の表情は、あの時と同じ。
”気になっている子がいる”、”一目惚れした”と話していた、あの時と……。


「あ、あのっ…覚えて、ない?
カラオケボックスで、ほらっ!ハンカチ…///。」

涼は分かりやすい位に、里奈を見て表情を緩ませている。
一瞬で分かる。
涼が一目惚れした、気になっている女の存在が誰なのか…。


っ…なんだよ、その表情。
カラオケでハンカチって、二人で何してんだよっ…。

俺が横目で里奈の様子を伺うと、キョトンとしていた彼女が涼の言葉に思い出したように「あ!」と小さく声を上げて…。微笑った。
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