この夏が終わっても

「百均の物かそうじゃないかくらい、すぐに分かるよ。」

涼さんはそう言って、笑った。
自分の嘘がバレバレだったのだと、少し恥ずかしいと思って俯いていると…。そんな私に涼さんが言う。


「……君は、すごく優しいね。」

「!……へ?」

返そうと遮られていた手が…。
押さえ込まれていた私の手が、涼さんの手にギュッと力を込めて握られる。


「?……涼さん?」

顔を上げると、涼さんが私を真っ直ぐ見つめながら言葉を続けた。


「あの時からね、もう一度君に会いたいと思ってたんだ。」

「……私、に?」

私に、会いたい?
そんな事を男性に言われた事、初めてだった。
だから、涼さんの言葉の深い意味に私は気付かなくて首を傾げる。

涼さんは暫く私を見つめてて、フッと微笑むと手を放して夜空を見上げた。
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