この夏が終わっても

「それは、受け取ってほしいな。
僕は女兄弟いないから、返されても使えないし…。」

「……分かりました。
じゃあ…。有り難く、頂きますね…!」

軽く会釈をして、すぐに顔を上げて涼さんを見上げると…。涼さんは私の前で屈んで、顔を覗き込んでいた。


「?……涼さん?」

「……。
将馬君が、ムキになる理由が…分かるよ。」

「……え?」

その言葉の意味が分からなくてじっと見ていると、涼さんは優しく微笑んで私から離れた。


「付き合わせて、ごめんね。
夜は危ないから、ちゃんとこのまま部屋に戻るんだよ?」

「はい、おやすみなさい。」

「おやすみ。」

就寝前の挨拶を交わすと、涼さんは中庭から去って行った。

さてと、私も戻ろうと、貰ったハンカチをパーカーのポケットに入れてベンチから立ち上がると…。近くに人の気配を感じてビクッとする。
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