この夏が終わっても

……。

ファーストキス、だった。
ずっとずっと、里奈としたかった。

……なのに、虚しくて。
胸が、痛くて苦しくて…。
全然、嬉しくなんてなかった。

……。

俺は唇を離すと、顔が見れなくて里奈に背を向けた。


「……。
なん、で…?っ…なんで、キス…したの?」

背後から聞こえる里奈の震えた声に、今更引けなくて俺は笑いながら誤魔化す。


「いいじゃん、別に。
どうせお前、涼とだってしてんだろ?」

最低な事を言ってるって頭では分かってるのに、止まらない。


「最後に全部奪ってやろうと思ったけど、萎えた。…お前みたいなお子様、興味ねぇ。」

心の中とは正反対の言葉が、口から飛び出した。
…もう、後戻りなんか出来ない。
今更、素直になんてなれなかった。


俺は、もう何も言わなかった里奈をその場に残して…。
一人だけで、民宿に戻った。
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