にゃんとも失せ物捜査課です
 なんでこうなってるんだ…。

 今日も犬飼のベッドで眠る美雨。
 それを眺め、ため息をつく。

「だって一緒にいたい。」

 意味が通じないのかと思えるほどに繰り返された言葉。
 うんざりしているのに、もう一度拒否する言葉はかけられなかった。

 そして前回同様についてきた美雨を追い返すこともしなかった。

 やっぱり人肌恋しい季節だからだと、自分を納得させ、連日のソファでの睡眠で痛い体を再びソファの上に乗せた。

 ただ今回は同じ騒動はごめんだと、美雨には犬飼が寝ているところに勝手に近づかないことと、マーキングはもうしないこと。
 などを約束させた。

「どうして…」と言う美雨に「嫌なら他に行け」と言えば大人しくおにぎりを口に運んでいた。

 人肌…恋しいなぁ。

 ハハッ…何考えてんだ。と頭を振るほどに、美雨の存在が気になっていた。

 いつの間にやら心の中にまで住み着いている美雨に、常に行動を共にしないといけないせいだと自分に言い聞かせた。

 そして無理矢理に目を閉じた。


 朝起きると体の節々が痛いくらいで、どこにも異変はなかった。
 拍子抜けする朝に若干の不安を感じて起き上がった。

「おはよう…ございます。」

 声のする方を向けば美雨がキッチンにいた。
 そういえば夢の中でいい匂いがして目が覚めたんだった。

「あぁ。おはよ。」

 心配する必要はなかったんだな。
 ハハッ。本当にこいつの心配をしたのか、はたまた自分が寂しかっただけだったりしてな……。

 ふと自分の頭によぎった思いに、何考えてんだか。と自嘲する。

「あの……。もう近づいてもいい?」

 律儀に約束を守る美雨に苦笑しながら「あぁ」と返事をした。
 すぐ隣に座る美雨は「えへへ」と嬉しそうだ。

 用意してくれていた朝ご飯を食べるとまた感慨深い気持ちになる。

 生活能力は俺よりよっぽど上らしい。
 知らないうちに部屋は綺麗になっており、ご飯も美味しい。

 それなのに、どこか『カメラアイ』の恩田と同じにおいを感じる。
 幼さの残る雰囲気。
< 25 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop