にゃんとも失せ物捜査課です
12.解体
署に行けば、嬉しそうなじいさんと顔を合わせることになり、犬飼は辟易した顔をする羽目になった。
しかし嬉しそうなじいさんが一転して顔を曇らせて言いづらそうに口を開いた。
「せっかく美雨ちゃんと打ち解けられたところ悪いんだが、厳しい知らせが入っておる。」
部屋にいたのは犬飼、美雨、栗山、恩田。
犬飼と栗山はじいさんのただならぬ雰囲気に一瞬にして表情を固くさせ、対して美雨と恩田は相変わらずの何を考えてるいるのか分からない表情のまま。
じいさんは自慢の髭を撫でつけながら珍しく真剣な面持ちで続けた。
「今回の血の海の事件。
成果がなければ『失せ物』は解体されるそうじゃ。」
「は?」
犬飼と栗山は同時に声を上げた。
「解体ってなんだよ。」
じいさんに詰め寄ったところで、どうにもならないことは分かっている。
現にじいさんも辛そうに眉を下げていた。
それでも何か言わずにいられなかった。
嫌でも耳に入る
「失せ物はお荷物だ」との意見。
それがとうとう実力行使で解体ということらしい。
それにしたって…。
『失せ物捜査課』
使えない者たちが追いやられた場所とされる謂れは恩田や美雨のような一般社会の秩序の中では生きづらい者たちが集められたためだ。
一般社会では生きづらくとも、類い稀な能力を持ち、今までも捜査に貢献してきている。
ただ、やはり能力を活かすためには『失せ物』のように互いを理解し、支え合える仲間がいる居場所が彼らには必要だと彼らと接している犬飼や栗山は痛感していた。
その『失せ物』を……。
「解体って……。
恩ちゃんはどうするのよ。
せっかくの能力を使わせなくするつもりなのかしら。」
栗山は下唇を噛みしめ、怒りにわなわなと震える手を握り締めた。
一般社会の秩序の中で生きられなければ排除される。
その中で周りに蔑まれていようとも心の拠り所のような『失せ物捜査課』
それさえも自分たちから奪っていくのか。
じいさんは解体についてそれ以上何も言わず、血の海の事件についての進捗状況を口にした。
「血の海の事件じゃが、捜査一課は事故という見方に落ち着きそうじゃ。
頭の陥没部分と頭の下にあった石の形が一致したようだ。
ただ被害者周り一面の血の海は解決できていないようだがな。」
事故………。
あの一目見て感じる異様さ。
それなのに事故なのか。
「あの一面の血に滑ったんじゃろうという見解らしい。
だがそもそもはあの血はなんのための血なのかのう。」
だいたい捜査一課も匙を投げたような事件。…いやもう今では事故として扱われている。
それに対して失せ物で成果を上げろとは散々な言い様だ。
つまりそれは即刻の解体を意味するようなものだ。
栗山は悔しそうに顔を歪ませている。
「まだ解体と決まったわけじゃない。
諦めずに捜査を続けるさ。」
犬飼は栗山の肩を軽くたたいて、部屋を後にした。
こんな仕打ちに納得できないのは犬飼も同じだ。
しかしそれを訴えたところで改善されることがないこともよく分かっていた。
良くも悪くも諦めていたのだ。
不意に手を引かれ体がガクンと後ろに傾いた。
忘れていた存在を急速に思い出す。
「んだよ。危ないだろ。」
後ろを振り向けば、見上げた顔からは相変わらずの分かっているのかいないのか分からない顔がそこにあった。
「ワンちゃんいい人。」
だからそれなんだよ……。
うんざりする美雨の言葉なのに、変わらない美雨に僅かに安堵した。
しかし嬉しそうなじいさんが一転して顔を曇らせて言いづらそうに口を開いた。
「せっかく美雨ちゃんと打ち解けられたところ悪いんだが、厳しい知らせが入っておる。」
部屋にいたのは犬飼、美雨、栗山、恩田。
犬飼と栗山はじいさんのただならぬ雰囲気に一瞬にして表情を固くさせ、対して美雨と恩田は相変わらずの何を考えてるいるのか分からない表情のまま。
じいさんは自慢の髭を撫でつけながら珍しく真剣な面持ちで続けた。
「今回の血の海の事件。
成果がなければ『失せ物』は解体されるそうじゃ。」
「は?」
犬飼と栗山は同時に声を上げた。
「解体ってなんだよ。」
じいさんに詰め寄ったところで、どうにもならないことは分かっている。
現にじいさんも辛そうに眉を下げていた。
それでも何か言わずにいられなかった。
嫌でも耳に入る
「失せ物はお荷物だ」との意見。
それがとうとう実力行使で解体ということらしい。
それにしたって…。
『失せ物捜査課』
使えない者たちが追いやられた場所とされる謂れは恩田や美雨のような一般社会の秩序の中では生きづらい者たちが集められたためだ。
一般社会では生きづらくとも、類い稀な能力を持ち、今までも捜査に貢献してきている。
ただ、やはり能力を活かすためには『失せ物』のように互いを理解し、支え合える仲間がいる居場所が彼らには必要だと彼らと接している犬飼や栗山は痛感していた。
その『失せ物』を……。
「解体って……。
恩ちゃんはどうするのよ。
せっかくの能力を使わせなくするつもりなのかしら。」
栗山は下唇を噛みしめ、怒りにわなわなと震える手を握り締めた。
一般社会の秩序の中で生きられなければ排除される。
その中で周りに蔑まれていようとも心の拠り所のような『失せ物捜査課』
それさえも自分たちから奪っていくのか。
じいさんは解体についてそれ以上何も言わず、血の海の事件についての進捗状況を口にした。
「血の海の事件じゃが、捜査一課は事故という見方に落ち着きそうじゃ。
頭の陥没部分と頭の下にあった石の形が一致したようだ。
ただ被害者周り一面の血の海は解決できていないようだがな。」
事故………。
あの一目見て感じる異様さ。
それなのに事故なのか。
「あの一面の血に滑ったんじゃろうという見解らしい。
だがそもそもはあの血はなんのための血なのかのう。」
だいたい捜査一課も匙を投げたような事件。…いやもう今では事故として扱われている。
それに対して失せ物で成果を上げろとは散々な言い様だ。
つまりそれは即刻の解体を意味するようなものだ。
栗山は悔しそうに顔を歪ませている。
「まだ解体と決まったわけじゃない。
諦めずに捜査を続けるさ。」
犬飼は栗山の肩を軽くたたいて、部屋を後にした。
こんな仕打ちに納得できないのは犬飼も同じだ。
しかしそれを訴えたところで改善されることがないこともよく分かっていた。
良くも悪くも諦めていたのだ。
不意に手を引かれ体がガクンと後ろに傾いた。
忘れていた存在を急速に思い出す。
「んだよ。危ないだろ。」
後ろを振り向けば、見上げた顔からは相変わらずの分かっているのかいないのか分からない顔がそこにあった。
「ワンちゃんいい人。」
だからそれなんだよ……。
うんざりする美雨の言葉なのに、変わらない美雨に僅かに安堵した。