にゃんとも失せ物捜査課です
「俺、犬飼誠司(いぬかいせいじ)25歳。」

 嫌々ながらに自己紹介をする。

 犬飼は耳にかかりそうな短髪を伸ばしたままの髪。
 スラッとした体型は警察官としてはなめられる気がして懸命に鍛えてはいるが、いくら鍛えても筋肉がつきにくい体質らしかった。

 そしてやる気がうかがえないと揶揄される顔つき。
 生まれながらなのか、今の境遇からなのかどちらにしても年相応とは言い難い。

 俺より3つも年上とかあり得ないだろ…。

 犬飼に反して美雨は可愛らしい顔立ちだ。
 少女と見間違えていたほどなのだから、かなりの童顔ということになる。

 見れば見るほど子どもにしか見えない。
 そして裸足。

 小馬鹿にしているのが分かるのか目が合えば唸り声を上げて睨んでくるようなただの野生児。

「現場に先に行っていたとはな。
 今回、美雨ちゃんはこの事件のために異動してきたようなもんじゃ。」

 写真をデスクに投げられ見てみれば先ほどの血の海に横たわった被害者。
 ただただ美雨が見つめていた遺体。

「なんでも動物にやられたんじゃないかって噂だ。」

「噂って…な。
 曲がりなりにも警察が噂話を鵜呑みにするのかよ。」

 被害者の顔や身体中には動物に引っ掻かれたような傷が無数にある。

 それが致命傷になるのだろうか…。

 それにしてもおびただしい量の血。
 違和感がある。

「で、この事件とこの野生児がどう関わるっていうんだよ。」

「美雨ちゃんは動物と話が出来るんだよ。」

「………。非科学的。さすが失せ物捜査課。」

 頭痛がしそうな頭を押さえて椅子に崩れ落ちるように腰掛けた。
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