にゃんとも失せ物捜査課です
17.忘れられないぬくもり
朝になっても美雨は帰ってこなかった。
あの程度のことを聞かれたくらいで大人げなかったな。
そう反省しつつも、美雨の居場所も、はたまた連絡手段も知らなかった。
美雨のことを何一つ知らなかった。
署に行っても美雨は来ておらず、じいさんには「美雨ちゃんは?」と聞かれる始末。
「出てった。」
言いにくそうに言えば相変わらずの呑気なたぬきじじいは「喧嘩したのか。ほどほどにな。」と、言うだけだった。
それだけかよ。
そう思いつつも、あいつだって大人なんだ。
ちょっと出てったくらいで、どうにかなるってわけじゃ…。
そう思って過度に心配するのはよそうと心に決めた。
仕事を終え、アパートに帰っても美雨は居るわけもなく。
何日か前のいつも通りの日常じゃねぇか。
静かで、服をその辺に脱いだって文句を言われない。
ベッドで寝ようと視線を向ければ、小さく畳まれた布団にズキッと胸が痛くなった。
人肌恋しいどころの騒ぎじゃないとでも言いたいのか……。
無理矢理に目をつぶると、美雨の顔が頭をチラチラとかすめる。
「っだぁー!」
ベッドから飛び起きると、頭をぐしゃぐしゃとかいてからアパートを後にした。