にゃんとも失せ物捜査課です
『鑑識課』と書かれた扉を開けると中にいた人物が親しげに声をかけてくる。
「あら。ワンちゃん。と…そちらは?」
緩く巻かれた髪を束ね、白衣とは対照的な派手なメイクのはっきりした顔立ち。
白衣でさえ隠しきれない妖艶な色気をまとった女性。
その風貌に美雨は気圧されたように後退りをして犬飼の後ろに隠れた。
「こいつは今日から失せ物に来た奴。」
犬飼は女性の妖艶さに目もくれず美雨を紹介した。
やる気のなさが全開という態度。
女性の方も犬飼のやる気のなさに慣れた様子で会話を進める。
「あら可愛い。地下足袋?」
散々無言の争いの末、たどり着いた形。
元々は鳶職の人が大工仕事の時に履く地下足袋。
今はガーデニング用などにお洒落な物がある。
と、いうのを靴が嫌だと無言の抵抗をしていた美雨を見兼ねたシューズショップの店員が勧めてくれた。
美雨が履いている物も可愛らしいタイプの物で、尚且つ足にフィットする履き心地にご満悦な美雨は抵抗することなく現在に至るわけだ。
犬飼の後ろに隠れていた美雨は足袋を褒められて嬉しそうにヘヘヘッと足元を気に入った様子で見ている。
警戒心も若干和らいだようだ。
「靴は気に食わないらしくてな。
面倒な奴を押しつけられたぜ。」
悪態をつけばギロリと睨んでくる反抗的な美雨に妖艶美女はクスクスと笑う。
「私は瑞浪麗華(みずなみれいか)。
ワンちゃんとはワンちゃんが捜査一課の頃からの付き合いよ。
麗華って呼んでね。名前の方が気に入ってるの。」
ナチュラルなウィンクをされて、また圧倒された美雨は微かに頷くだけだった。
「余分な雑談はいいんだよ。
午前中の被害者、鑑識に上がってるか?」
「えぇ。」
麗華から資料を受け取ると内容を確認する。
多岐に渡る資料を広げ、気になる点をチェックしながら読み進める。
「この血は人間の血ではないんだな。
遺体の割に多過ぎるとは思ったんだ。」
真剣な面持ちで資料に食い入る犬飼の横顔をジッと見つめる麗華に怪訝な表情を浮かべた。
「言いたいことあるなら言えよ。」
苦々しく吐き捨てても麗華は気にも止めない。
「フフッ。
ワンちゃん捜査が板についてるわ。
捜査一課に戻ればいいのに。」
軽口なのは分かっている。
それなのに冗談で受け流せずに顔を歪めて嫌な思いを吐き出す。
「あんな腐ったとこ戻れるかよ。」
「何言ってんの。
元々はそこのエースだったくせに。」
「……………。」
「ねぇ。この子、何も話さないわね。」
「あぁ。」
「ワンちゃん。
よく意思の疎通が図れたわね。」
「あぁ。」
うんざりした顔を向けても、プイッとそっぽを向くだけで言葉を発することはなかった。
ただサラサラと長い髪がそっぽを向くたびに揺れるだけだった。
「あら。ワンちゃん。と…そちらは?」
緩く巻かれた髪を束ね、白衣とは対照的な派手なメイクのはっきりした顔立ち。
白衣でさえ隠しきれない妖艶な色気をまとった女性。
その風貌に美雨は気圧されたように後退りをして犬飼の後ろに隠れた。
「こいつは今日から失せ物に来た奴。」
犬飼は女性の妖艶さに目もくれず美雨を紹介した。
やる気のなさが全開という態度。
女性の方も犬飼のやる気のなさに慣れた様子で会話を進める。
「あら可愛い。地下足袋?」
散々無言の争いの末、たどり着いた形。
元々は鳶職の人が大工仕事の時に履く地下足袋。
今はガーデニング用などにお洒落な物がある。
と、いうのを靴が嫌だと無言の抵抗をしていた美雨を見兼ねたシューズショップの店員が勧めてくれた。
美雨が履いている物も可愛らしいタイプの物で、尚且つ足にフィットする履き心地にご満悦な美雨は抵抗することなく現在に至るわけだ。
犬飼の後ろに隠れていた美雨は足袋を褒められて嬉しそうにヘヘヘッと足元を気に入った様子で見ている。
警戒心も若干和らいだようだ。
「靴は気に食わないらしくてな。
面倒な奴を押しつけられたぜ。」
悪態をつけばギロリと睨んでくる反抗的な美雨に妖艶美女はクスクスと笑う。
「私は瑞浪麗華(みずなみれいか)。
ワンちゃんとはワンちゃんが捜査一課の頃からの付き合いよ。
麗華って呼んでね。名前の方が気に入ってるの。」
ナチュラルなウィンクをされて、また圧倒された美雨は微かに頷くだけだった。
「余分な雑談はいいんだよ。
午前中の被害者、鑑識に上がってるか?」
「えぇ。」
麗華から資料を受け取ると内容を確認する。
多岐に渡る資料を広げ、気になる点をチェックしながら読み進める。
「この血は人間の血ではないんだな。
遺体の割に多過ぎるとは思ったんだ。」
真剣な面持ちで資料に食い入る犬飼の横顔をジッと見つめる麗華に怪訝な表情を浮かべた。
「言いたいことあるなら言えよ。」
苦々しく吐き捨てても麗華は気にも止めない。
「フフッ。
ワンちゃん捜査が板についてるわ。
捜査一課に戻ればいいのに。」
軽口なのは分かっている。
それなのに冗談で受け流せずに顔を歪めて嫌な思いを吐き出す。
「あんな腐ったとこ戻れるかよ。」
「何言ってんの。
元々はそこのエースだったくせに。」
「……………。」
「ねぇ。この子、何も話さないわね。」
「あぁ。」
「ワンちゃん。
よく意思の疎通が図れたわね。」
「あぁ。」
うんざりした顔を向けても、プイッとそっぽを向くだけで言葉を発することはなかった。
ただサラサラと長い髪がそっぽを向くたびに揺れるだけだった。