君のことが気になって仕方がない


 練習前。とぼとぼと重い足取りで、校舎裏を歩いていた。

 中村君と気まずくなってから、もう数日……。

 私が『話しかけてこないで』って言っちゃったから、中村君……ホントに話しかけてこなくなっちゃったよ。

 もちろん、私からも話しかけることが出来ず。

 もう、嫌われたかも。

 涙を浮かべながら、校舎の角を曲がろうとした。


「私、豊が好きなのっ」


 えっ!?

 突然の声に、足を止めた。

『豊』って、まさか……

 陰からバレないように、そうっと覗くと──ドキッとした。

 やっぱり中村君だ。女子と二人で向き合っている。

 告白したコ、可愛い。スタイルもいいし。

 覗き見なんて悪い。離れなきゃ……でも、気になる。

 中村君が、何て返事をするのか……。

 緊張しながら、身を潜めていると──


「……ありがとな。エリ」

「豊……」


『ありがとう』って……え?

 告白……受けた?

 中村君は優しく笑みを浮かべると、告白したコの頭をポンッと触れた。

 雰囲気がいい……『エリ』『豊』って親しげに呼びあってもいるし。

 じゃあやっぱり、告白を受けたんだ。


「…………っ」


 この場からそうっと離れ、体育館とは反対の方向へと走った。

 あれ……何で?

 何で、こんなに悲しいの?





 あぁ、そうか。

 私……中村君が好きなんだ。





 中村君が他のコを好きになった後に、やっとハッキリと気づくなんて

 私って、バカだよね……。

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