君のことが気になって仕方がない



 マネージャーに告白をしてから、数週間が経った。

 練習後。部室にて、二年生の先輩から、良からぬウワサ話を聞かされた。

 それは、何かと言うと──


「あのさ、キャプテンとマネージャーって、どうやらデキてるみたいだぞ」


 スポーツバッグに水筒を入れようとした手が、ピタッと止まった。

 な……何だってー!?


「マジかよ! 知らねぇし!」

「オレ知ってた! 前から噂があったよな?」


 密かに動揺する俺をよそに、みんなが一斉に食いついた。

 俺は知らない。そんな、信じがたい噂……っ! いけねっ、手元が狂って水筒落としたっ。


「結構噂になってんだよなー、あの二人」

「最後の体育館の点検も、二人きりでするしな」

「あー、だからかぁ。歴代のキャプテンとマネージャーって、カップル率が高いって言われてるのは」

「そんなジンクスまであんのかよ。それじゃあ、いよいよホントっぽいじゃんか」


 ヤバい……ヤバいぞ。

 このまま水筒を握り潰せそうなぐらい、手に力がギリギリと入る。


「もしかしたら今頃……

『マネージャー。念のため、君のことも点検しよう』
『やだぁーキャプテンったらー! うふ』

 なーんて、やってたりしてなー!」


 バカな一人芝居に、ダハハー! と、むさ苦しい笑い声があがる。

 いやいやいや! ちっとも笑えないですって!

 でも確かに、キャプテンはクールだし頼もしいし、何より……マネージャーより一つ歳上。

 それに比べて俺は、まだ入って半年の一年坊主……。

 だからか? この前の告白の返事、まだ貰えていないのは。

 マネージャーが、キャプテンと……デキてるから?


「っ!」


 冗談じゃねぇ!

 八つ当りで、水筒を荒っぽくバッグに突っ込んだ。


「おい、中村! どこ行くんだよ!」

「忘れ物ですっ!」

「体育館にか? マジかよ。二人の愛の点検の邪魔をすんじゃねぇぞ! ダーハハッ!」


 うるさい! と、言い放ちたい気持ちに耐えて、部室を飛び出した。


 マネージャー、教えて下さい。

 キャプテンとは、ただのウワサですか?

 もし、そうだとしたら……

 俺のこと、どう想ってますか?

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