空飛ぶ計画
「あるところに海に暮らす少年がいました。少年は海にいつまででも潜っていることが出来ます。何も食べなくてもお腹は空かず、何も飲まなくても喉は乾きませんでした。

ある時イソギンチャクが問いました。「何故海に暮らすんだい?」少年は答えました。僕は魚だからです、と。

ある日水面を漂ってると、遠くに人間の頭が見えました。顔だけ海から出して、その人間は立っていました。少年はそれに近付きます。下を向いて黙ってる人間に言いました。なにをしているの、と。「あなたこそ夜の海でなにしてるのよ」少年は答えます。僕は魚だから朝も昼も夜も泳いでいるよ、と。「あなたの様な頭ならこの世界でも生きていけたかしら」人間はしばらく間を置いてからそう呟きました。君は死ぬの、そう少年が問うと人間は「いまどき入水なんてダサいかしら」と少年を見つめます。少年はダサいの意味が分かりません。今まで話してきた魚達からは聞いたことのない言葉でした。しかし少年は答えました。とてもダサいね、と。



すると人間は笑いました。「そっかぁダサいかぁ」少年はいい加減にした返事が間違ったのかと思いましたが、人間はどこか嬉しそうに笑っていました。「じゃあ別の方法を考えようかしら」そう言って海を出て地上を歩く人間の背中は、とても強そうに見えました。人間が見えなくなると、少年は再び海へと潜りました。深く深く潜りました。」
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