桜時雨の降る頃
何を言われたか急激に理解して、
耳から頬へと熱がジュワッと広がるのを感じた。


「俺もう、遠慮しないから。

雫が俺をまだ男として見てないなら、見てもらえるようにするし」


今までの迷いを吹っ切ったかのように、強い瞳を向けてくる。



「気持ちだけなら朔斗にも、誰にも負けない。

後悔させないから。

俺を選んで、雫」


陽斗のハッキリとした想いの告白が耳の奥でこだまする。



……男として見てないわけない。

見ないようにするので精一杯だったんだよ。


陽斗の想いに応えられるような女なのか、自分に自信がなくて。



「好きなんだ」


陽斗の純粋な気持ちがわたしの胸を熱くしていく。

その真剣な眼差しに、金縛りにあったみたいにわたしは動けなくなっていた。



陽斗が伝えてくれた、まっすぐな『好き』に

心が囚われる。


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