桜時雨の降る頃




花火大会の帰り際、家まであと少しのところで
わたしは並んで歩く2人の間に割って入った。



「ねぇ、手繋いでもいい? 子供の頃みたいに」



よく3人で手を繋いで歩いた。

誰かが急に走ると、その動きについていけない誰かが転んだりしたっけ。


それを思い出しながら、わたしは2人の返事を待たずに手と手を取った。


きゅっと握る。


「……お前、酔ってるのか? 酒も飲んでないのに」


呆れたように呟く朔斗も、わたしの手を振り解こうとはせずなされるがままだ。


「雰囲気に酔ったかもね」


へへ、と笑うわたしを見て朔斗は溜息を吐く。


「昔はよくこうして歩いてたよな」


陽斗はゆっくり手を握り返してくれる。

同じくらいの大きさの手、だったはずなのに

今はわたしよりも大きい手のひら。


「……ありがと、いつも一緒にいてくれて」


わたしはボソリと下を向きながらそう呟いた。

2人は無言のままだった。



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