桜時雨の降る頃
うちの前まで黙って手を繋いで歩いた短い時間。
これが3人の最後の夏になるってこの時
予感していたのだろう。
鼻の奥がツンとした。
朔斗の気持ちに胸が痛くなり、陽斗の想いに胸が熱くなった日。
わたしは心の中で
幼い姿をして笑い合うわたし達を思い浮かべながら
彼らにそっとサヨナラをした。
――――朔斗は、わたしを選ばない。
きっと、陽斗がわたしを想ってくれている限り。
そんな選択をしたんだってこの夜、なんとなく感じた。
ううん、中3の時から朔斗はその姿勢を崩してなかった。
そのことが妙にわたしの心の奥で引っかかったけれど
それを突っつくようなことはしない。
わたしが何度か朔斗に抱いた気持ちは、届かないんだから。
朔斗とわたしはケンカばかりで、いつまでも友達みたいな距離感がちょうどいいんだ。
わたしがどんな答えを出そうと
今までの3人の歴史は変わらないし、絆も揺るがない。
そう信じて、足を一歩踏み出そうと決意した。