桜時雨の降る頃

うちの前まで黙って手を繋いで歩いた短い時間。

これが3人の最後の夏になるってこの時
予感していたのだろう。

鼻の奥がツンとした。


朔斗の気持ちに胸が痛くなり、陽斗の想いに胸が熱くなった日。


わたしは心の中で

幼い姿をして笑い合うわたし達を思い浮かべながら


彼らにそっとサヨナラをした。





――――朔斗は、わたしを選ばない。

きっと、陽斗がわたしを想ってくれている限り。

そんな選択をしたんだってこの夜、なんとなく感じた。
ううん、中3の時から朔斗はその姿勢を崩してなかった。

そのことが妙にわたしの心の奥で引っかかったけれど
それを突っつくようなことはしない。

わたしが何度か朔斗に抱いた気持ちは、届かないんだから。


朔斗とわたしはケンカばかりで、いつまでも友達みたいな距離感がちょうどいいんだ。


わたしがどんな答えを出そうと
今までの3人の歴史は変わらないし、絆も揺るがない。


そう信じて、足を一歩踏み出そうと決意した。


< 105 / 225 >

この作品をシェア

pagetop