桜時雨の降る頃
2年前の桜が満開な頃。
交通事故で、俺の半身ともいえる双子の弟、陽斗が死んだ。
その頃、陽斗は俺たちの幼なじみである雫と付き合っていて
デート中のことだった。
居眠り運転の車が、陽斗たちが歩いていたところへ突っ込んできて
避けきれなかった雫を庇うようにーーーー
周りの目撃者と、
後から記憶を取り戻した雫が言っていたことだ。
警察からの連絡で駆けつけた俺たち家族は
横たわって言葉を発しない、真っ白な顔色した陽斗の姿を見て
言葉を失った。
目の前が真っ暗になった。
一緒に雫もいたと聞いて、一瞬更なる不安が襲った。
俺の大事な奴が2人もいなくなるなんて耐えられないと思った。
けれど、雫は全身打撲や骨折などの怪我はしていたものの、無事だったことに安堵する。
それでも、当然ながら俺の喪失感はひどく
しばらく陽斗の前から動けなかった。
……俺とそっくりな面した陽斗。
俺の片割れ。
ポタポタ、と俺の目から何かが零れ落ちた。