桜時雨の降る頃
呆けた顔で両親から事故の説明を受ける雫。
頭や身体、あちこちに包帯が巻かれていて痛々しい。
…….俺が代わってやれたら良かったのに。
どうして俺が残ったんだ。
くらっと目眩がしそうだった。
あんなに雫を大事にしていたのに、なんで……
ずっと俺が俯いている間に
事故の説明が終わったらしい。
雫の両親がこちらに目線を向けたことに気付いた。
俺が言うって決めたものの、なんて伝えりゃいいんだ。
俺自身、まだ受け止めきれていないのに。
でも、事実を告げるしかない。
俺は顔を上げて、ベッドの側まで行き、雫をそっと見下ろした。
「……陽斗は……駄目……だった」
死んだなんて言葉を使いたくなくて
そんな表現になってしまった。
雫は訳が分からない、と言った顔をして「は?」ともう一度問いかけてくる。
勘弁してくれ。
もう言いたくないのに。
けれど、理解してもらわなきゃいけない。
ちゃんと言わなきゃダメだ。
「陽斗が、……死んだ」