桜時雨の降る頃
「でももう、フラれてもいいかって。
自分の気持ち隠すのはもう終わりでいいかって。
勝負してみることにした。

だから、朔斗も意地張ってないで雫にぶつかりなよ。俺のことは気にしないで」




なんだそれ。

沸々と怒りが込み上がってきて、

気付いたら俺は、陽斗の胸倉をグイっと掴んでしまっていた。


「…………勝手な思い込みしてんじゃねーよ!

俺がいつ雫を好きだなんて言った?

雫が俺を好きだなんてあるわけねーだろ!

そんなの、自分がヘタレなただの言い訳じゃねぇか!」


俺は雫を好きだなんて思ってない。

ーーーー思ってないんだ。


ギリっと陽斗のシャツを掴む手に力が入る。


それでも、陽斗は俺の目を真っ直ぐ見据えて逸らさなかった。



「……俺に遠慮なんてして欲しくないんだよ」


カッとなって、ドン、と力任せに壁に陽斗を叩きつける。


「……してねぇよ、そんなもん!
いいか、この話はもう終わりだ!!」

そう吐き捨て、クルッと背を向けた。

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