桜時雨の降る頃
会場に着き、なんとか座る場所を見つけると
俺も行くと言ったのに陽斗は1人で屋台へ買い出しに行ってしまった。

さっき、陽斗が妙な話を雫にしようとしていたけど
告白の前置きみたいなもんだろうと思った俺は
巻き込まれたくなくて話を無理矢理遮った。



始まった花火を見上げながら、
雫と出逢ってからの12年を想った。

よく高校まで一緒にしたもんだ、と改めて思う。
幼なじみなんてのは、中学までの付き合いになるのが大半のようだった。

実際、俺たち以外の同級生にだってそういう関係の奴らはいたけど
高校まで同じってのは俺たちだけだった。

その時点でもう不自然だったのかもしれない。


いつからだろう、こんなふうに男女の関係になることを考えてしまったのは。



「……あのさ」



「うん?」


雫は俺の呼びかけに、視線を夜空から剥がしてこちらを向いた。



「俺たち、限界来てるよな」


「…………!」


雫は目を大きく見開いた。

ゴクリと息を呑むのも分かる。



「今から話すの、聴いてろよ」


俺の気持ちを話すのは今しかない。
そんな気がして、一度深呼吸をしてから口を開いた。




「さっき、家で陽斗に言われたんだ。雫に自分の気持ち伝えるって」



「陽斗が……?」


「あぁ。そうしたらもう、俺たちはこうして3人でいるのは無理になるだろうって思った。

ずっとそれを避けてきたけど、限界の時期が来たんだよな。

お前もずっと避けてたんだろ?陽斗もだ」














< 168 / 225 >

この作品をシェア

pagetop