桜時雨の降る頃
雫は多分、勘付いている。

俺が誰を大事にしようとしてるか。
2年前も同じようなことを話してるから。

それでも訊いてくるのはきっと
ーーーー本当の俺の気持ちを知りたいんだろう。

けど、俺は答えられなくて下を向いた。


すると、信じられない言葉が雫の口から飛び出してきた。


「一生言わないつもりだったけど、

わたしの初恋、朔斗だよ」

思わず肩を揺らして反応してしまう。

ーー嘘だろ?

陽斗が言ってたことは、気のせいじゃなかったってことかよ。
過去のこととはいえ。


「でも、わたし達がお互い好きって思ってた時間はすれ違ってるんだよね。朔斗は小6?、わたしは中2。どうにもなんないわけだよね」



「……俺たちらしいな。その噛み合わなさっぷり」


所詮、そういうことだ。
俺と雫は同じレールにはいないんだ。


「俺は、きっとお前を傷つけるしかできないから」


あのキスが最たる証拠だ。

雫の気持ちは無視してばかりで、自分の思いに囚われてる。




「…今更、朔斗に傷つけられたりなんてしないよ。そんなにヤワじゃないの、知ってるでしょ?」

雫がまるで俺を慰めるように優しくも明るい声色で言った。


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