桜時雨の降る頃
その帰りだ。


歩道を歩いていたわたし達の方へ車が突っ込んできたのは。


気付いた時には身体がフリーズして、動けなくて



「雫!!」

という陽斗の呼び声が聞こえた一瞬の後、

目の前が真っ暗になると共に

強く抱き寄せられた。



まさか、あの温もりが最後になるだなんて。



嘘でしょ?



もう、動かないだなんて。


陽斗の手も足もあるのに、もうそれがわたしを包んでくれることはない。


お日さまみたいに愛してくれた陽斗が

もう、いない。



それは、わたしにとって絶望だった。


でもすぐに思い出した。

泣き崩れるわたしの傍にいる、陽斗の生き写し。

ーーーー朔斗。


朔斗こそ、この事実に絶望感を抱いてるに違いない。

わたしよりも濃い血の絆があるんだ。


ごめんね、朔斗。

奪ったのはわたしだ。


陽斗の光り輝く未来も。

どうしたら償えるのだろう。



あまりの罪の重さにわたしは、ごめんねをただただ繰り返すしかなかった。


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