桜時雨の降る頃
「わたし、行かない」


先に歩を進めようとした朔斗の足がピタっと止まった。


おそらく火葬が終わるので朔斗が探しにきたんだろうことは分かっていた。


「大丈夫、ちゃんと帰るから。
どっちにしろこの後は親族だけの方がいいでしょ?だから朔斗は早く戻って」



早口でまくしたてた。

朔斗と目を合わせるのが辛くて。

ごめんね、朔斗。

わたしとなんか居たくないでしょ?




「……俺と居るのが、嫌か?」


まさかの問いに驚いて思わず朔斗の顔を見た。

その瞳は哀しそうに揺れている。


「みんな俺の顔見て、悲しそうにするんだよ。

…………参るよな」


ポツリと言い、目を伏せて、口元を歪ませる朔斗。


確かに朔斗の顔を見るのは辛かった。

思い出さずにはいられなくて

朔斗のせいでも何でもないのに

みんなと同じような反応を自分がしてしまっていることに、また罪悪感が募る。

わたしは朔斗に1番に寄り添ってあげるべきなのに。




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