桜時雨の降る頃
何も言えずに、朔斗の瞳を見ると
そこには雨でビショビショのわたしが映っている。



「雫と居るのが嫌とかじゃない。
何度も言ってるけど今度のことはお前のせいじゃない。絶対ヘンな事考えんなよ。

ただ…………思い出が多すぎる」



朔斗の言わんとしてることが何となく分かった。


思い出がありすぎて、一緒にいたら辛いんだ。


少しの間でも、落ち着くまで

わたし達は距離を置いた方がいいってことだろう。


「…………わかった」


そう返事をすると同時にフラッと目眩がして

わたしは倒れ込んだ。

すんでのところで朔斗に抱きとめられたようだったけど、既にわたしは意識を手放していた。





遠くの方で、「雫!……すげー熱」と朔斗が言ってるのが聴こえたような気がしたけど

目を開けることは出来なかった。




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