桜時雨の降る頃
その様に苦笑いを零しながら、朔斗はわたしの額に手を当ててきた。


「良かった。随分熱引いたみたいだな。

お前、すげー熱出して倒れたんだぞ。覚えてるか?」


そういえば。

朔斗と話してる最中に意識がなくなったような気がする。



「…………もう、ぜんぶ済んだの?」


「あぁ。いったん、お前のことは雫の母さんに任せた。様子見に今、来たとこ」


「そうだったんだ。……ごめんね」


そうか。

じゃあ、さっきの夢は……


「陽斗、たぶん…わたしにお別れを言いに来たんだ。夢で会った」


言葉にすると何だか滑稽な感じがするけど
朔斗は笑わずにじっと耳を傾けていた。


「もう……会えないんだね」


夢でいいから逢いたいと心の奥底で願っていたのが陽斗に届いたんだろうか。


「…….陽斗、なんか言ってた?」


「わかんない。言ってたけど、おぼろげにしか思い出せない」


「どうせ好きだとか愛の告白だろ」


「……そうだったかも」

ふふっと笑いながら、涙の筋が落ちていくのをこめかみに感じた。


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