桜時雨の降る頃
朔斗は顔を逸らしたまま、こちらを見ようとせず黙って突っ立っていた。


答えを探しているのかもしれないその数秒が

異様なまでに永く感じられた。



腰に手を当てて、ふーっと長い溜息を吐きながら

朔斗はやっと振り返った。


「……この状況じゃ、もうしらばっくれても意味ねーな」


観念したかのように天井を仰ぎ、はぁ、と嘆息をつく。


それから、わたしの胸元にあるアルバムをひょいっと奪っていき、パラパラとページをめくった。


あるページで手を止めると、開いたまま机の上に置く。


見ると、陽斗がわたしの首元にじゃれついてる写真だった。


「この時、かな。

陽斗とお前を応援するって決めてから初めて後悔したのは」



哀しそうに口元を歪める朔斗に

わたしは胸を鷲掴みにされたみたいにギュッと心が痛んだ。


「覚悟してたつもりだった。

でも全然足りなかったんだな。陽斗が当たり前のようにお前の隣にいるのをずっと見てるのがキツかった」




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