桜時雨の降る頃

朔斗は、パラっとまたページをめくって

わたしが笑ってる写真のところで手を止めた。


「……もし、陽斗がお前を好きじゃなかったら

俺はたぶん」


そこで言葉を切って、わたしをじっと見つめる。


「俺の気持ち、いつかは伝えてたろうな。

陽斗は俺が自分で気付かないうちから分かってたんだよ。

……俺がお前を好きだって。

この写真見て、確信したんだろうな」

朔斗の初めての本音を聴いて、胸がじんじん痛みだし瞳が潤んでくる。



朔斗がわたしよりも陽斗の気持ちを選んだということをわたしは分かっていた。

だからこそ、わたしは……

そこまで思い出して、ハッとした。

“わたしの本当の気持ち”ーーーー

陽斗はわたしの奥底の想いを拾い上げていたっていうの?

居たたまれなくなって、ギュウっと目を瞑る。


わたしが密かに朔斗に惹かれていたこと

朔斗がわたしを受け入れる気がないと、その想いを封印したこと


ーーーー気付いてたの?陽斗。


陽斗のその時の気持ちを思うと

心が痛すぎて

もう堪え切れない涙が次々に溢れてくる。




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