桜時雨の降る頃
「わたし……サイテーだ」
陽斗の想いに甘えて、自分に嘘をついていたようなものだ。
陽斗を好きだと無意識に暗示をかけて。
だから陽斗は不安だったんだ。
わたしが朔斗の本音に気付いて、陽斗の元からいつか去るんじゃないかって。
……ごめんね、陽斗。
本当にごめん。
こんな葛藤を抱えさせていたなんて、気付けずにいたわたしは大馬鹿者だ。
「俺もサイテーだ」
わたしの嗚咽を見て、朔斗も呟く。
「未練がましく半端なことするから、陽斗に本音を知られちまった。
あいつが知ったら悩んだ末、こうすることは分かり切ってたのに」
自分の詰めの甘さに反吐が出る、と自嘲的な笑みを浮かべて
朔斗は二段ベッドの下段の柵に浅く腰掛けた。
そこは陽斗が使っていた場所。
今はそこに布団類はなく、ガランとしていた。