桜時雨の降る頃
消せなかった想いがある。


陽斗と付き合いながら、

朔斗の彼女が気になった。


朔斗と口喧嘩するのが実は楽しくて、

その回数が格段に昔より減ったことに寂しさを感じていた。



プライベートで遊ぶ事が減ってしまった代わりに

学校で朔斗の姿をこっそり探してしまう自分がいた。


2人がセットになっていたわたしには

どうしようもない癖みたいなものだから、と
自分に言い訳をした。


それはどれも、

朔斗に傍にいて欲しいわたしの我儘。



「馬鹿だね……」





そう呟いて、幹に背を預けようと振り返ると


肩で息をして苦しそうな朔斗が目の前に立っていた。



今の今まで走ってきた、そんな姿を見て

わたしは息を呑んだ。


追いかけてきてくれてたということに

どうしようもなく胸が熱くなる。

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