桜時雨の降る頃
なんとか呼吸を整えようと、少しかがんで膝に手をつく朔斗は、それでもわたしから目を離さなかった。



「……やっと見つけた」


そう言って、額から滲む汗を拭いながら

一歩、わたしへ近づく。


わたしは逆に後退りした……けれど、すぐに幹にぶつかった。


「お前、ふらっといなくなんのやめろよ」


2年前も朔斗はわたしを探しに来てくれた。

そのことを言ってるんだろう。


わたしは首を横に振りながら言った。


「……もう、わたしのことは探さないでいい」


陽斗にも、朔斗にも

わたしは半端なことをしてたんだ。




朔斗は大きく溜息を吐いてまた一歩、距離を詰めてくる。


来ないで、と言いたい代わりに

わたしは首をふるふると振り続けていた。


「さっきのバイバイは何だよ?
永遠の別れのつもりか?」


怒っているのか口調がキツめだ。


わたしは何も言えなくて、下唇を噛んだ。







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