桜時雨の降る頃
「俺から離れんなよ。

もう二度と、俺の前からいなくなるな」


そう言って、朔斗は腕をわたしへ伸ばし

ぎゅうっと強く抱き締めた。

それはどこか、わたしの存在を確かめるような抱擁だった。


朔斗の香りに包まれて、わたしは懐かしさに目眩を覚えそうになる。


ーーーーでも。


わたしは自分を許せないよ。


朔斗の優しさに包まれながら、わたしは涙で震える唇を必死に開いた。


「…………無理だよ、朔斗。

わたしがフラフラしてたせいじゃん、全部。

朔斗を苦しめたのも、陽斗を傷つけたのも。

どうして、わたしのせいだって詰らないの!?

責められて当たり前のこと、してんだよ?」


もう、建前とかはいらない。


わたしは多分、陽斗がいなくなってから初めて

自分の奥底の感情をぶちまけていた。


「どの面下げて、朔斗の側にいられるっていうの!?

わたしにはもう、そんな資格ないんだよ!

わたしはっ…………」


腕の中から逃れようと朔斗の胸元を強く押しながら叫ぶ。





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