桜時雨の降る頃


けれど、わたしは続けて言おうとしたことを呑み込んだ。


というより、物理的に言えなくなった。


朔斗が突然、荒々しく唇を塞いだから。


「さくっ……んっ」


息継ぎの合間に抗議しようとするけれど、
また塞がれる。


荒々しいけれど、熱のこもった口づけにわたしは呼吸を忘れそうになる。


次第に頭の中が真っ白になっていき、何を言おうとしたのかも分からなくなってしまった。


段々力が抜けて、ヘナヘナと膝から崩れ落ちそうになった時、ようやく朔斗の唇から解放された。


わたしは放心状態のまま、そっとまた抱き寄せられる。


「……資格とかいらない。

お前は自分を許せないのかもしれないけど

そんなのどうでもいい。

俺は陽斗を守れなかった分、今度はお前を守りたい。

お前がいなきゃ、俺がダメなんだよ!」



「でも」


「でもじゃねぇ!

この2年、会わなくなって分かった。

陽斗がいない今、俺を支えてるのはお前の存在だって」


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