桜時雨の降る頃


胸が震えた。

朔斗がここまでの想いを吐き出してくれたのは
初めてだった。


ーー朔斗が、泣いてる。


資格とかどうでもいいって言われた。

わたしが必要なんだって。

朔斗にこんな風に必要とされるのは単純に嬉しくて

側にいたいと思った。


「泣かないでよ……」


わたしは腕の中で見上げると、朔斗の頬に残る涙の筋を愛しく思いながらそっと撫でた。

あぁ、そうか。

陽斗がいなくなった寂しさを埋めることができるのは

陽斗を誰よりも側で見てきたわたし達なんだ。


「……泣いてねーし」


憮然と言い放つけれど、まだ瞳は潤んでいた。


「いいの?」


「何が」


「わたし、朔斗の傍にいても……」


「そうしろって言ってんだろ。どれだけ言わなきゃわかんねーんだよお前は」

目を吊り上げながら怒る朔斗を

いつぶりに見ただろう。


ーーーー朔斗の隣に、困り顔で笑う陽斗の顔が見えた気がした。




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