桜時雨の降る頃
高校を卒業した春。
陽斗は、わたしの前から。
――――ううん、わたし達の前から、姿を消した。
その知らせを受けたのは、真っ白な病室のベッドの上。
ズキズキと痛む全身。
腕や頭に包帯が巻かれていることに気付いたけど、自分の身の上に何が起きたのか一瞬分からなかった。
どうやら気絶してしまっていたらしい。
「……は?」
目の前にはわたしの両親、それと何故か朔斗もいた。
両親が今のわたしの状況を説明してくれた後、
信じられないことが朔斗の口から飛び出した。
何を言ってるかわからなくてもう一度聞き返した。
すると、消え入りそうな声で朔斗はわたしにある事実を再度告げた。
まっすぐ見つめてくるその目は、赤くなっていた。
理解できたのは、わたし達が交通事故に遭ったことだけ。
……は?
朔斗ってば、何言ってんの?
冗談でしょ、やめてよ。
この三言がわたしの脳内で繰り返される。何度も何度も。
と同時に、朔斗の表情からして、冗談なんかではないこともどこかで分かっていた。
嘘であってほしい、そう思いながら
「……陽斗はどこ?」
震える声で朔斗に訴えた。
連れて行って、と。