桜時雨の降る頃
わたしはまだ、朔斗の腕の中にいたままで。

いつからか、わたしよりも大きくなって

この至近距離だと見上げないと顔が見えないっていう身長差に、今、気が付いた。


いつも憎まれ口ばっかりたたく朔斗が静かにわたしを見下ろしている。


時が止まったみたいに、しん、と静まり返る空間の中で

わたしと朔斗はお互いに、目が逸らせなくなっていた。


ふいに朔斗の影がわたしにかかる。


ーーーー近い、そう思ったときには







朔斗の唇がわたしの唇にそっと触れていた。






思わず目を見開いた。


突然の出来事に驚きすぎて

腰から砕け落ちそうだった。

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