桜時雨の降る頃
わたし達の出会いは、物心がついたかつかないかくらいの頃。
けれどわたしはよく覚えている。
こんなにそっくりな2人が同時にこの世にいるなんてあるんだ!
と結構な衝撃だったからだ。
家の前の私道で自転車の練習をしていたら、ひょっこりと同じ顔をした男の子が2人現れた。
「じてんしゃのれんしゅうしてるの?」
「だっせー、のれないの?」
同じ顔なのに出てくる言葉はまったく違った。
わたしは、両方ともに答えるかたちで「うん」と返事した。
2人は虫を追いかけてうちの方へ来たようで、
虫取り網とカゴを手に持っていた。
「てつだってあげる!」
にっこりと優しく微笑んでそう言ってくれたのが陽斗。
「えー、さっきのバッタはどうすんだよ!」
不満げに漏らしたのが朔斗。
そして、戸惑うわたしをよそに双子はあっというまにわたしの側までやってきて、
言い争いをしながら手伝ってくれた。
けど、子供の補助だけで乗れるようになるはずもなく
結局わたしが派手に転んで大泣きしたため、うちの親が家から出てきて、あとから追いかけてきた陽斗達の親が謝って、というのがわたし達の出会いだった。