桜時雨の降る頃
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修学旅行3日目以降はあまり記憶に残っていない。

中学時代の思い出を作るためだったはずのこのイベントによって、

少なくともわたしは2人を意識せずにはいられなくなってしまった。


朔斗によって実感した陽斗の気持ちと自分の気持ち。


それでもズルイわたしは、3人のぬるま湯みたいに心地よい関係を続けたくて

白黒ハッキリさせないまま時は過ぎ、

高校受験を迎えた。


陽斗も決定的なことを言ってくるわけでもなく今までと変わらなかったし
変化を望んでいたわけではなかったんだと思う。


朔斗もあの日以来、わたしに陽斗とのことを勧めることはなく
あのキスは幻だったのかと思うくらい、相変わらずの毒舌を繰り出していた。


でも、3人とも一貫して

恋の話はしなかった。

受験でそれどころではなかったせいもあるけれど

多分、自然と避けていたような気がする。

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