桜時雨の降る頃
わたしの声に驚いて、陽斗が目をパチクリさせる。


「こいつが? ……ふーん」

朔斗にジロジロと上から下まで見られたかと思うと、今度は顔に焦点を定めてくる。
妙に緊張して朔斗を見返すと、

「80、62、86?」

「…………」

すぅっと血の気が引いたような気がしたのもつかの間。

こめかみにピキッと青筋が浮かんだのを感じた。

何よそのデータ……
見た目のスリーサイズ?


「朔斗……逃げたほうが」

わたしの顔を見て、ひくっと頬を引きつらせながら陽斗が朔斗に警告をするけれど、「へ?」
と朔斗が返事をしている間にわたしは持っていたカバンを思いっきり朔斗の顔に打ち付けた。


「って〜!! 何すんだよ!」


顔をしかめながら、手で押さえて痛がる朔斗。
自業自得だ。


「セクハラだから!!」

腹が立ちすぎて、ズンズンと足を踏み鳴らしながら早足で歩いた。

「待って、雫。俺も行く」

朔斗を置いて部活に向かうわたしと陽斗。

チラッと後ろを見ると、まだ痛がってる様子だ。

「いい気味!」

と憤然と言うと、陽斗は困ったように眉を下げていた。



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