桜時雨の降る頃
小学校高学年の頃になって、わたしはようやくあることに気付いた。


それは女子の話題の中で。いわゆる恋バナだ。


「しーちゃん、いいなぁ。いつもあの2人と一緒で」


「え?」

「そうだよねぇ。あの2人かっこいーじゃん!顔もいいし、勉強も運動も出来るし」

あの2人とは、陽斗と朔斗のことだ。

かっこいい……??

考えたこともなかった。

その頃のわたしがかっこいいと思っていたのは、テレビに映るアイドルなどの芸能人。

同じクラスの女子たちが初恋をしてる頃、わたしはてんで遅れを取っていた。

「そうかなぁ? 」

そんな高い評価をされていることがよく分からなくて、首を傾げる。


「しーちゃんはいつも側にいるから分からないんだよー。

知ってた? 2組のアヤちゃん、陽斗くんに告白したんだって!」

キャーっと、興奮した声が飛ぶ。

アヤちゃんとは、うちの学年で一番可愛いと言われてるコだ。

こ、告白!?

思わず目をひん剥いた。

「し、知らない! で、どうなったの?」

いつの間に!!

陽斗ったらわたしに報告もしないなんて!と
意味不明の怒りを覚えた。

彼にわたしへの報告の義務なんてない。

「それがぁ、断られたらしいよ? あのアヤちゃんを振るなんてタダ者じゃないね〜」

友達は妙な感心をして頷いていた。





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