桜時雨の降る頃
思わず目を丸くして陽斗を見てしまった。
いやいや。
自分で言うのもなんだけど
そんなことわざわざするほどの女じゃないよ、わたしなんて。
「雫が、俺たち以外の男と仲良くなるのが何かイヤだったんだよ。困ったもんだろ?」
片眉を下げて苦笑するその顔には、確かに困惑が滲み出ていた。
カキ氷を食べる手が止まる。
「雫は俺たちのことで色々嫌な思いしてただろうに、勝手なことしててごめん」
「……嘘つくのは良くないって言ってたのに」
「うん。だから、ギリギリ嘘はついてない。
って言っても、狡いよな」
決まり悪そうに鼻の頭を掻いた後、わたしに視線を移してきた。
「俺たちが、雫を独占したかっただけだ」
陽斗の瞳は熱を含んでいて、わたしはそれから目を逸らせなかった。
独占したいなんてストレートな表現に、胸の奥がキュッとする。
「でも俺は、いつの間にか
朔斗にも妬いてたんだ。知らなかっただろ?」
少しだけ辛そうに口元が歪んだ。
こんな陽斗を見るのは初めてかもしれない。