ヒステリックラバー

「はい。美優が好きで、でも僕の気持ちを知って重荷に思われたら今度こそ立ち直れない。だから美優を避けていました。どんどん好きになるのが怖かったので」

そうだったのか。会社で直矢さんの冷たい態度に悩んでいた。それなのに積極的になった時には戸惑った。

「一歩進もうと美優を食事に誘おうと思ったりもしました。結局自分は重たいのだと思い知りましたけど」

「………」

直矢さんの不器用さに抱きしめられながら頭を抱えそうになった。あの時の私は直矢さんを薄気味悪いと思っていた。こうも気持ちが行違うのかと面白くもあり切なくもある。

「社員旅行の時美優が素直な僕がいいと言ってくれたから、美優への想いを隠さないと決めました。それがどんなに嬉しかったか」

私を見つめる直矢さんの目には熱がこもる。私も嬉しくてどんどん目が潤む。

「僕の愛情は重いですか?」

そう問いかける目の奥に不安は感じられない。私の答えを知っているのに敢えて問う意地悪な直矢さんに私は笑いそうになる。

「めっちゃくちゃ重いです!」

はっきりと答えた。

「でもこんなにも私を想ってくれた人はいません」

直矢さんに救われた。私が欲しくてたまらなかった言葉を、寂しさを埋めてくれる体温も、直矢さんは与えてくれたのだ。

「この重い愛で満たされてないと物足りない。直矢さんじゃないと私は満足できないです」

「僕の愛情は軽くすることはできそうにないですけどいいですか?」

「はい。重い男上等です!」

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