ヒステリックラバー
「直矢、二人だけで話がしたいの」
愛美さんは私が邪魔だと言いたいのだろう。私だって直矢さんと元カノの話をそばで聞きたくはない。話の内容はものすごく気になるけれど。
「今ここで言って構いません。彼女には聞かれてもいい」
「え?」
思わず声を出した私に直矢さんは「美優に隠すことは何もないから」と笑顔を見せる。
直矢さんは構わなくても私も愛美さんも困ってしまう。
「そう……」
愛美さんは小さく呟くと直矢さんを見た。
「ずっと電話かけていたのにどうして出てくれないの?」
私は目を見開いた。愛美さんが直矢さんに電話をかけていることが不安になる。直矢さんを振ったという愛美さんから連絡を取る理由はなんだろう。
「社用携帯には業務時間以外は出ませんので」
「でもプライベートの番号通じなかったし……」
「変えましたから。堀井さんともう関わらないつもりで、何もかも変えたんです」
直矢さんの冷たい声に鳥肌が立った。私に言われた言葉ではないのになぜだか私まで傷つく。
「ちゃんと話したいの……時間を取ってくれない?」
「僕は特に話すことがないですから」
「私は直矢とやり直したい!」
愛美さんは強い声で言葉を吐き出した。
「偶然再会しただけでそんなこと言うなんて都合がいいですね。どうせその程度の気持ちでしょう」
「もう一度直矢と付き合いたいの!」
顔を真っ赤にして愛美さんは訴えた。それに対して直矢さんは変わらず無表情を貫く。