ヒステリックラバー
「当日が楽しみです。私も来ようかな」
七夕祭りの当日に直矢さんは朝から夜まで銀翔街通りにいることになる。土曜日のその日、私は休みだけれど銀翔街通りを歩くのもいいかもしれない。
「では僕と一緒に行きましょう。といっても僕は仕事ですが」
「お手伝いしますよ。でも休憩時間は一緒に歩いてくださいね」
「もちろん」
以前山本さんの担当だったときは仕事にやりがいはあったけれど今ほど熱心に打ち込んだことはなかった。反対に直矢さんと組んで大きいイベントに携わると裏方でも楽しくて仕方がない。愛しい恋人がそばにいるということが大きいのだけれど。
「僕はこれから古明橋公園の方に行きます。美優は戻ってホームページ用の作業写真を撮ってデザイン課に回してください」
「わかりました」
直矢さんを見送って街灯の飾りをデジカメで撮り、植え込みに花を活ける作業員の背後からも数枚撮った。
「お疲れ様です」
声をかけられて振り返ると愛美さんが立っている。
「あ……お疲れ様です……」
私の不安の種が予告なく目の前に現れて驚いた。先日会社の前で修羅場を経験してから私は愛美さんが一気に苦手になってしまった。
「戸田さん……でしたよね」
「はい……」
「先ほど他の連合会職員に見せていただきましたが私にもマップを一枚くださいますか?」
「ああ、はい」
私は作業マップを愛美さんに渡した。
「ありがとうございます。見積書を見て上から許可が出ましたので請求書をお送りください」