ヒステリックラバー

直矢さんが結婚を考えた人。冷たく接してもあんな魅力的な人にやり直したいと懇願されたら、直矢さんもなびいてしまうかもしれない。ライバルが愛美さんだなんて勝てる気がしない。私に愛美さんに勝る魅力があるとは思えない。



◇◇◇◇◇



愛美さんが本気で直矢さんとやり直したいと行動したら、愛美さんのもとに行ってしまうんじゃないかとずっと不安な毎日だ。私はまた恋人に離れていかれるのが怖い。直矢さんは私の前では笑顔でいてくれるけれど、私はうまく笑えているか心配だった。

二人で食事をした帰り、直矢さんにマンションまで送ってもらうのは恒例になった。人気のない住宅地で別れのキスを交わす。そうして私がマンションに入るのを直矢さんは見届けてくれるのだけど、今夜はキスをしたあとに私から直矢さんに抱きついた。

「美優?」

ぎゅうぎゅうと抱き締める私に直矢さんは心配そうに声をかける。

「直矢さんと離れるのが寂しいです……」

「またいつでも会えるのにですか?」

答える代わりに私は背伸びをして直矢さんにキスをした。
必死で繋ぎ止めないと私は今度こそ傷付いて立ち直れない。私の頭を優しく撫でる直矢さんを手放したくない。私はもう直矢さんなしじゃ生きていけない。

「直矢さん……私の部屋でお茶していきませんか?」

「え?」

「美味しいフルーツティーを買ったんです……」

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