ヒステリックラバー
直矢さんからその名前を聞いて体が強張る。私の不安の原因を気づいている。
「もう過去のこと。僕は美優しか愛せません」
「はい……」
「不安に思わないでください。仕事以上に彼女に接することはありませんよ」
直矢さんの深い愛情を感じる。直矢さんが好きで好きで堪らない。
「僕は美優が離れていかないか不安です」
「離れるわけないじゃないですか」
私の答えに直矢さんは複雑そうな顔をした。直矢さんも恋愛に臆病になっている。恋人に離れていかれたトラウマは簡単には消えない。だからこそ、こんなに心を満たしてくれる直矢さんから離れるわけがない。
「それにしても、美優から迫ってくれるなんて僕は幸せ者ですね」
「節操がなくてすみません……」と私は小さく呟く。
どんなときでも、そんな直矢さんにもずっと触れていたい。大好きで愛しい気持ちが溢れる。
「誘惑してくる美優は最高に可愛いですよ」
耳元で囁かれて私の顔は赤くなる。「もう!」と照れて直矢さんの肩を軽く叩くと、微笑んだ直矢さんに唇を奪われる。
「美優……今夜は帰りたくなくなってしまったのですが、泊まってもいいですか?」
私の背中や腰を撫でる直矢さんの手がゆっくりと胸に移動する。
「んっ……はい……」
直矢さんが靴を脱ぐとベッドへ手を引いた。
明かりのついていない薄暗い部屋でお互いの服を脱がせ合う。
「僕の心は全て美優のものです。それは疑わないでください」
キスの合間に唇から漏れる愛の言葉に私は荒く息を吐きながら「はい」と精一杯答えた。