ヒステリックラバー
「これなんですが、太陽の光が反射して横の信号が見えにくいとご意見を多数いただきまして、違うものに変更させていただきます」
「え! それは失礼いたしました」
盲点だった。確かに光沢のあるピンクゴールドの玉は光をよく反射する。信号の横にこの飾りをつけるとどうなるかを深く考えられなかった。
「交通事故が起こってからでは遅いですから。イベントにも影響が出ますので他の場所も同じようなことになっていないか確認をお願いします」
棘のある言い方に私は委縮する。確かにうちの会社の落ち度だ。でも必要以上に低い声の愛美さんは仕事とは関係ないことで怒っているような気がしてしまう。
「ではここは宝石店の前のものと交換させていただきます」
「よろしくお願いいたします」
私はマップを出して宝石店の飾りをチェックする。宝石店の前の飾りは不透明なプラスチックでできている。あれなら信号の横に飾っても問題ないだろう。
「戸田さん」
「はい……」
私はマップに印をつけながら愛美さんに返事をした。
「直矢から連絡をもらいました」
私は驚いて愛美さんを見た。その顔は相変わらず無表情だ。
「やっとまともに話ができたのが嬉しくて。直矢は私の気持ちを最後まできちんと聞いてくれました」
目を見開いた。愛美さんの気持ちを聞いたとはどういうことだ。てっきり直矢さんは復縁したいという気持ちを拒否したと思っていたのに。