ヒステリックラバー
なんでこんなことに? どういうこと? 飾りを結んだロープが切れたってことだよね?
手で持てる重さではあるけれど、高い位置から落ちてきた飾りに当たった愛美さんが心配だった。その愛美さんを大袈裟なほど心配する直矢さんに呆気にとられてしまった。運よく真下に居ても怪我をしなかった私は何もできずにただ玉を拾うことしかできなかった。
作業の事故から数時間で直矢さんと部長と社長が作業を担当する下請け会社の社長を伴い、銀翔街通り連合会に謝罪に行った。
事故の原因は飾りを結んだ丈夫なはずのロープが実際には古くなり切れやすくなっていて、飾りを下ろす際に街灯の金具で擦れて切れてしまったことが原因だった。
今回怪我をしたのは愛美さんだけで、頭に飾りが当たらなかったことは幸いだ。通行人や車に被害がなかったことから銀翔街通り連合会は大事にはしないでもらえたようだ。
直矢さんが謝罪に出向いている間に私は直矢さんのスケジュール調整のため方々に連絡を取っていた。夕方に会社に戻ってきた直矢さんは初めて見る落ち込んだ顔をしていた。部長と役員と共に会議室にこもると定時を過ぎても出てこなかった。
「初めてじゃね? 武藤がやらかしたのって」
山本さんが突然私のデスクまで来た。呑気な声を出す山本さんに怒りが湧く。
「やらかしたなんて言わないでください! なお……武藤さんが悪いわけじゃないですから!」