ヒステリックラバー

「美優と見られてよかった」

まっすぐ私を見つめて直矢さんは言った。

「本当に? 私でいいんですか?」

「美優がいいんです」

「愛美さんの代わりじゃないですか? 私を選んでくれますか?」

吐き出した不安に直矢さんは眉間にシワを寄せる。

「美優は最初から勘違いしているんです。僕はもう愛美のことは本当になんとも思っていません」

「でも愛美さんは直矢さんが気持ちを全部聞いてくれたって言ったんです」

「それは言葉通りの意味じゃないかな。僕は愛美と電話で話して彼女の気持ちを聞いたけど、それを受け入れてはいませんから」

「私と付き合ったのも勘違いじゃなく?」

「勘違いなんかじゃなく、美優の全部を好きになりましたよ」

ほっと胸を撫で下ろす。愛美さんのアプローチで直矢さんの心が揺れてしまうのではと心配していたのだ。

「でも飾りが愛美さんに当たったときすごく心配していたじゃないですか」

「そんなの当たり前です。誰であろうと怪我人はいない方がいいんですから」

直矢さんは真顔で言い切った。

「それに、もっと大事になっていたらうちとの契約は今後なくなるかもしれない。会社にとって大ダメージです。僕は怪我人の心配と七夕祭りの心配と今後の仕事を心配しましたよ」

愛美さんを個人ではなく『取引先の人』として心配した直矢さんにほっとする。私だって愛美さんが怪我をしたとき頭が真っ白になった。

「それにしても、まさか美優がここまで愛美に影響を受けるとは思わなかったです」

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