ヒステリックラバー
この言葉に私は恥ずかしさがじわじわと湧き上がる。
「すみませんね、影響されて……」
声も後悔が滲んで小さくなる。
「愛美さんみたいな元カノが現れたら誰だって焦ります」
頬を膨らませて直矢さんを睨む。そんな私を見た直矢さんは私の頬を両手で包んだ。
「今日愛美のところに行ってきました」
再び不安な顔になる私に直矢さんは頬をトントンと優しく叩く。
「七夕祭りの最終確認とうちわの納品でね。そして七夕祭りが終わればもう愛美と会うこともないってはっきり伝えました」
直矢さんの口からそのことが聞けて嬉しい。
「愛美さんは直矢さんに未練タラタラで諦めませんよ?」
「美優への想いをこれでもかと力説したら、呆れてもういいと言って追い出されました」
「え……」
「僕が好きな女性だけに一直線なのを愛美はよく知っていますから」
直矢さんが優しく微笑むから泣きそうな目を隠すために下を向く。
「美優に振られるんじゃないかって不安でした」
「そんな、私の方こそ……」
私たちはお互いに離れていかれるのを恐れていた。
「直矢さんの愛情は私だけのものですか?」
直矢さんは真剣な顔で私を見つめる。
「僕の全部は美優のものです」
周りの雑音にも負けないくらい直矢さんの声ははっきり聞こえた。
「どんな女性ももう美優以上にはなれない。僕はずっと美優のそばにいる」
直矢さんの言葉を心の奥までしっかり受け入れた。何度も何度も言ってくれた言葉が更に体に染み渡るようだ。